仮設住宅を訪ねて

今週の月曜日と火曜日の2日間にわたって福島の仮設住宅を訪ねてきました。

全国の工務店組織JBN(Japan Builders Network)の作る仮設住宅です。

JBNの作る仮設住宅はよく見かけるプレハブ型ではなく、木造の仮設住宅でした。

プレハブメーカーが自社工場で加工したものを現地で組み立てるという方式に対してJBNの仮設住宅は現地の材料を使って、現地の職人が作ることで地元に仕事を供給してお金を還元する「地域再生」という目的も兼ねて作られていました。

 

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 建築資材です。

土台をのぞいてすべて福島県産の杉材を使用しています。

地元の材木を使うことで、寸断された物流や合板などの建築資材が不足した状態でも資材の調達が可能だとの事でした。

使用する製材部材数を出来るだけ少なくする事や材木の乾燥時間が取れない事による材の収縮に対応できる仕上げにするなど昔からの工務店、大工の知恵が生かされた仮設住宅です。

 

 

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この場所(いわき市)では集会所、グループホームなども含めて約200戸が建設されていました。 

1日に150人くらいの地元の職人が働いているそうです。

実際に被災して避難所から通われている方も仕事ができるということで喜んでいるということでした。

 

 

 

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基礎は仮設なので杉丸太を使用しています。

リサイクルを考え、防腐処理はしていないということでした。 

 

 

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集会所も設けられていました。

暑いですがとても緊張感のある現場で働いている人たちからは仕事というよりは使命感みたいなものを感じました。

 

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サッシを取り付け、防水紙を貼っています。

住み心地という点でも工務店、大工の知恵が生かされた仮設住宅だと思います。

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今回の被災地が東北地方の寒い地域ということもあり、断熱対策もとられていました。

床も断熱材と防湿シートでしっかりと作られていました。 

 

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壁の断熱材は羊毛断熱材・サーモウールを使用しています。

グラスウールが不足する中で安定して調達ができたということです。 

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きちんと整頓された現場です。 

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生活の場としてお互いが顔を合わせることができるように玄関は向かい合わせの計画になっていました。

仮住まいとはいえ、実際に生活するには配置計画にも細かな配慮が必要なのだと思います。

 

 

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引き渡し済みの完成現場も見てきました。

この場所は住宅地の中にある公園を利用したそうです。

プレハブ型の仮設住宅には地元の住民にも違和感を感じる方もいるということですが、景観的にも落ち着いた雰囲気になっていました。

 

大手のプレハブメーカーが自社工場で加工して現地で組み立てればスピード感はあるかもしれませんが、工務店も集まって知恵を出し合えば大きな力になるのだと思いました。

ここ20年間だけでも3度の大きな災害を経験している国で、災害後の仮住まいの対処方法として住み心地や地元へのお金の還元、仕事の供給なども含めて、地場の工務店にも力になれる方法で道筋を作ってくれているのを感じました。

 

 

実際に津波の被害にあった場所にも行きました。

 

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いわき市の海岸沿いの津波の被害にあった場所です。

ボルトを4本使って基礎と柱を固定するホールダウン金物も外れて折れ曲がっています。 

 

 

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土台と柱を固定するフラットプレートは外れ、筋違いは折れて筋違いプレートから外れています。

耐震金物は地震による横揺れが起きた時に柱を引き抜く力の強さに応じて配置されています。

津波の被害にあっていない建物は外観上何事もなかったかのようだったので建物の耐震性自体は間違いなく向上していますが津波の力には恐ろしさを感じました。

 

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土台は120角、立派な家だったんだと思いますが、

ホゾ部分が裂けてしまっています。

 

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別の場所では防波堤が倒れていました。

右側に見える黒い土のう袋の積んでいる場所に防波堤があったようです。 

 

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防波堤がこの状態ということは木造住宅が耐えるのは難しそうです。

もしも柱と基礎がもっと強い力で取り付けられていれば基礎も一緒に流されてしまうのだと思います。

 

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震災から4か月が経過しています。

津波の被害にあっていない場所は外観上、何事もなかったかのようにも見えますがあちこちにがれきの山が残っていました。

発電所の問題も抱えながら暑い中、復興への日々を重ねていくのは大変なことだと思います。

あらためて自分たちにも出来る小さなことでも継続して協力していきたいと思いました。