蓄熱・通気・遮熱とログハウス(3)

ランタサルミログハウスの施工方法をご紹介しながら今までの居室内だけを断熱材で覆う工法に工夫をして床下から屋根裏までの人が生活していない空間も含めて一つの居住空間と考え、家自体の温度・湿度の四季を通しての変化を少なくしていく方法をご紹介しています。

そのために「居室内だけを断熱」という考え方から、床下は蓄熱、壁は通気、屋根は遮熱という工夫を加えていきます。

今回は屋根の断熱・遮熱構造についてご紹介します。

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屋根の合板が貼られています。

通常はこの上に防水紙を貼り、屋根材を貼っていきます。

 

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ご紹介する遮熱材は防水紙の上に通気メッシュが貼りつけられています。

この上に屋根材を施工することで70℃ともいわれる屋根面のすぐ下で全面換気を可能にしています。

合板の温度を抑え、その下にある断熱層の効果を高めてくれます。

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全面に通気メッシュが貼られました。

右側の黒い部分から給気され、屋根の頂上部分から抜けていく遮熱構造になっています。

 

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続いては屋根下地合板の居室側の断熱工事の様子です。

合板の上側で遮熱構造を作り、下側では断熱層を作ります。

こちらは自然素材を水で発泡させる断熱材で環境にやさしく、現場での吹付け充填なので隙間ができることもなく、断熱層の効果を高めてくれます。

 ランタサルミの195mm×45mmの大きい垂木の中に吹き込まれていきます。

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無垢の木で仕上げることで遮熱と通気、断熱と調湿という4つの性能を持つ屋根構造が出来上がります。

 

  

ということで、蓄熱・通気・遮熱についてランタサルミログハウスの施工方法を通してご紹介してきましたが、実際のところはどうなのか?

T様にご協力をいただきまして温度・湿度を計測してきました。

 

まずは外気温です。

建物南側にある屋根付きデッキのポストの陰に設置しました。

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温度33℃・湿度42%

 

 

 

 

甲府で35℃以上あった日です。八ヶ岳高原の大泉町とはいえ体感的にはなかなかの暑さです。

次の写真は室内のリビング中央付近です。

 

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温度27℃・湿度55%

 

 

 

 

温度は外気温-6℃でエアコン・扇風機など使用せず自然換気のみです。

ログハウスとしては余裕の数字ですが、湿度は若干高めですね。

 

続いては床下コンクリートに設置されたセンサーの温度です。

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温度21℃

 

 

 

 

 

外気温33℃に対して床下の土間コンクリートは21℃なので10℃以上低いことになります。

実際に床下に設置してみました。

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温度21℃・湿度77%

 

 

 

 

 

土間の温度センサーと同じ温度です。

湿度は若干高めですが完成後間もないのでコンクリートの乾燥度などの影響もあるかと想像されます。

それにしても外気温が33℃に対して床下の温度が21℃です。

電気代のかからない24時間稼働の天然クーラーです。

 

続いては屋根裏の温度です。

夏場の2階はどこに行っても暑いという印象があるかと思いますがその天井裏の温度です。

 

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換気扇を外して屋根裏に設置しました。

 

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温度28℃・湿度80%

 

 

 

 

 

 

屋根裏の温度とは思えない数字です。

屋根面に温められ、熱気のこもった屋根裏ではなく木陰に近い状態です。

湿度の高さは要検討かもしれませんが期待以上の数値です。

 

以上が実測数値のご紹介でした。

もちろんエアコン・扇風機などの機械設備は使用せず、地熱と自然換気、素材の持つ調湿効果などを利用した家づくりの結果です。

節電時代の目標とした

  1. 冬場の床下の温度を上げる(地熱利用で夏場は床下の温度を下げる)
  2. 居室内に調湿素材を使用し、空気の流れを考慮する
  3. 屋根裏の温度を下げる

3つの項目はすべてクリアーできるどころかこの様子だとエアコンなしで四季を通しての屋根裏を含めた建物の温度変化が外気温の変化の中におさまってしまいそうです。

つまりエアコンを使わなくても夏は外気温よりも涼しく冬は暖かいというわけです。

 

ログハウスの作り方を通して地熱利用や遮熱構造についてご紹介してきましたが、あらためてログハウスは地熱利用や遮熱構造と相性が良く、相乗効果で住まう人を快適にしてくれる住まいだと感じます。

もともと日本人は木の性質を上手に住まいに利用してきたってところもありますね。 

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 と、いうことで一見ただのかっこいいログハウスですが床下では地熱利用、壁には断熱・調湿・蓄熱機能や森林浴効果、屋根は遮熱・通気・断熱・調湿とそれぞれに目に見えないところで住まう人を快適にしてくれます。

突然訪れた節電の時代ですが、単なる断熱発想に先人たちの知恵と新しい素材を加えると快適な住まいといいますか、本物の住まいが見えてきそうです。