今回は住宅基礎のお話です。
住宅基礎のツボについてできるだけ簡単にご紹介します。
まずは掘削から。
一般的に住宅は基礎が支えていると思われがちですが実は掘削した地盤面が住宅(と基礎)を支えています。
ここからが構造物。となります。
だから掘削幅や地盤面を丁寧に掘削して掘削後の転圧(締固め)を重ねていきます。
基礎のまわりの埋戻しの土が最小限になるように基礎の掘削幅はできるだけ狭く、丁寧に掘削しています。
「雑で広い」掘削でも仕上れば同じですが似て非なる基礎に仕上がります。
砕石を敷いてステコンを打設します。
ステコンは基礎の原寸墨を出すために打設するコンクリートで墨出しとも呼ばれます。
基礎と住宅の重みを支える部分です。
基礎の底盤部を丁寧に作ると基礎の完成度が上がり、基礎の完成度が高いと住宅の完成度も高くなっていきます。
続いては鉄筋とコンクリートについて。
ご存じのとおり基礎のコンクリートの中には鉄筋が組まれています。
コンクリートと鉄筋はお互いの欠点を補い合うことでお互いの長所を生かすベストパートナーといわれています。
たとえばコンクリートは押しつぶそうとする圧縮の力には強いのですが引っ張られる力には弱い。
鉄筋は引っ張られる力には強いがサビには弱い。
そこでコンクリートの弱点を補うために鉄筋を組んでコンクリートの中に入れます。
鉄筋はコンクリートのアルカリ性に守られて錆びることなく、コンクリートは鉄筋を入れることで引っ張りの力から守られるわけで、とてもいい関係です。
二つの素材が重なり合うことで、さらに強い構造物となっていくわけですが、コンクリートは時間の経過とともに中性化するといわれており、中性化から鉄筋を守るため鉄筋は必ずコンクリートに60mm以上入っている必要があります。
これを「コンクリートかぶり」と言いまして、このかぶりが少なく鉄筋がコンクリートの中で錆びて膨張すると内側からコンクリートを破壊するといわれています。
ベストパートナーだった鉄筋とコンクリートもきちんと施工されなければ仲が悪くなってケンカしてしまうわけです。 コンビ解消ですね。
続いてはコンクリートにかかる引っ張りの力からコンクリートを守る鉄筋の役割です。
鉄筋はつなぎ目無しで組まれることが理想ですが建物が大きくなればつなぎ目は出てきます。
その場合は鉄筋径の40倍の長さを重ねることで1本の鉄筋とみなすことができます。
13mmの異形鉄筋を使用する場合は13mm×40=520mm以上の重なりで1本とみなします。
地震などの時に力のかかる基礎のコーナー部分などは鉄筋を折り曲げ加工します。
お互いの鉄筋を折り曲げて力のかかるコーナーのコンクリートが割れないように補強します。
通常300mm以上、それぞれに曲げてコンクリートを補強します。
丁寧に配筋されるとコンクリートがしっかりと鉄筋を守り、守られた鉄筋がコンクリートの弱点を補います
コンクリートが打設されました。
鉄筋はコンクリートにより守られ、コンクリートは鉄筋の力で引っ張られても割れることなく、力のかかる場所はさらに鉄筋で補強されています。
木造や鉄骨造とかと並んでRC造というのを耳にしたこともあるかと思いますが、このRCとはReinforced Concreteの略で補強されたコンクリートという意味です。
異なる二つの素材を組み合わせることで出来上がる強い構造物で、耐震性を持ち、建物にかかる重さを地面に均等に伝える役割もします。
逆に、丁寧に施工しなければお互いの素材の弱点だけを持った構造物になってしまうのもお分かりいただけるかと思います。
埋戻しを終えて、基礎が出来上がりました。
掘削の幅を最小限にすると埋戻しの柔らかい土の部分も最小限ですみます。
仕上がってしまえば地面から数10センチしか見えませんが丁寧に作ることでベストパートナーが手を組んだ強い基礎が出来上がります。
TVなどでよく見る中古住宅購入後の耐震検査で「この家の基礎には鉄筋が1本も入っていないですね」などと言われている基礎でも見た目は変わらないので、しっかりと記録を残して住宅の資産価値の向上に努めていきたいものです。
あらためて始まりの地面です。
私はこの地面の上に立つのがすごく好きで、完成後のお宅でお茶などをいただいている時も、なぜか始まりの基礎底を思い出してしまいます。
で、この写真からお茶の時間までの道のりを一通り思い出すのを密かな楽しみにしています。
ということで、話がそれてしまいそうなので、
簡単ですが基礎工事の基礎のお話でした。
もっと詳しく見たい方は、ベタ基礎や布基礎などの基礎の種類や基礎断熱、地熱利用、土壌蓄熱式暖房サーマスラブなどの詳細を
「基礎工事の施工例」にまとめましたので関心のある方は見ていただければと思います。
完成現場の施工例は見れても、なかなか基礎のなかみをあからさまに見れるサイトは少ないと思いますので参考になれば幸いです。